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September 2011 の投稿一覧です。

国立障害者リハビリテーションセンター就労相談室長と発達障害情報センター所長が視察に来られました

国立障害者リハビリテーションセンター四ノ宮美恵子就労相談室長と発達障害情報センター深津玲子所長、同鈴木さとみ相談員が大分県発達障がい者支援センターECOALと就労支援施設どんこの里を視察されました。
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五十嵐康郎理事長(全国自閉症者施設協議会長、日本自閉症協会副会長)を交えて発達障がい児者支援における公的な専門性の確保について、大分県発達障がい者支援専門員養成研修をご紹介しながら、意見交換もさせていただきました。

http://www.rehab.go.jp(国立リハビリテーションセンター)

平成23年度発達障害者支援センター全国連絡協議会公開講座の報告

平成23年6月に開催された発達障害者支援センター全国連絡協議会公開講座は、多くの皆様のお力添えをいただき 盛況のうちに無事終えることができました。
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本講座の内容と感想についてご報告させていただきます

基調講演 演題「発達障害児・者のユニークさを伸ばす」
講師 中邑 賢龍氏(東京大学先端科学技術研究センター教授)


障害者権利条約の批准をめざして国内の障がい者支援体制の整備がすすめられていく中、発達障がいへの理解を広めていくことと同時に、障がいを機能的な側面(個人)からみた治療のみならず、機能的な側面を症状として捉えることで、その症状を環境的な側面(社会)から和らげるといった支援体制の推進を目指した「バリアフリー」から、障がい者に限らず誰にとってもやさしい環境を目指した「ユニバーサルデザイン」へといった視点で社会全体を見直していく必要があるとの説明をいただきました。このように、発達障がいを個人の問題として捉えるのではなく、社会の問題として捉え直していくことが、当事者や支援者を孤立させず、周囲に理解や支援体制の広がりを生み出していく道にもつながりやすくなるといった提案に対して、たいへん大きな希望を抱きました。なぜなら、支援者側が当時者に対して「変容」を求めるといった「訓練」や「療育」といった観点からではなく、テクノロジーを用いた代替技術による症状の軽減を目指した相談やコンサルテーションをすすめていくことが、実は、誰もが暮らしやすくなる社会へとつながっていくとともに、発達障がいの支援とは、実は、そのきっかけの1つとして捉えることがとても重要であることに気づくことができたからです。
我が国のような先進国では、第一次産業が衰退し、第二次産業は海外移転やロボットが導入されることにより、サービス産業が最も重視され、環境的にも発達障がいの特性に応じた就労支援を進めていくことは困難な状況にあります。そのため、既存の社会になじむ「変容」を目指した職業訓練ではなく、その症状のままでも働ける場面を生み出していくといった見方で、就労できる場を当事者とともに創造していくことが極めて重要であるという提案に対しても、既存の環境や制度に行き詰まり感を持たれており、共感を覚えた方も少なくはないものと思われます。実際に、このような社会構造の変化に伴い、障がい認定のある人(手帳保持者)よりも、障がい認定のない人の方が生きにくさを抱えてしまっているような状況があることを、支援センターの相談を通して幾度となく感じさせられることがありますし、一般的にも「器質的な障がい」を通してではなく、困難な状況にある人に向けての支援がスムースに行われるような仕組みへと、福祉制度が転換していくことが望まれるという声を耳にすることも増えています。
今回の中邑先生の講演では、こうした社会変容に対して柔軟に対応を行っていくために新たなアイデアやテクノロジーを持ち寄ることが、「障がい」を通してではなく、「困り」を通して支援が展開される社会へと日本が成熟していくことにつながっていくことが期待できる。そして、「発達障がい」をキーワードにしながら、共に暮らしやすくなる社会に向けたアイデアを提案していくことが、発達障がい者支援センターに期待されている、というメッセージをいただいたように思われました。

シンポジウム テーマ「自助活動支援について」
札幌市・島根県・大分県の当事者とファシリテーター、小林真理子発達障害対策専門官、中邑賢龍氏、ECOAL五十嵐


当事者の方から、自助活動を支える相談役として発達障害者支援センターの役割を期待しているといったご意見をいただきました。そして、シンポジウムの中では、関係機関が連携していく目的の中には、「障がい者」のみならず、困っている状況にある、あるいは、困りを抱えやすい器質を有した人を支え合えるような社会を目指していくことをふまえて発達障がいの特性を社会の中で生かしていくことや、特性を生かした就労場面や地域生活の事例を紹介していくことが支援センターの役割として期待されるであろうというご提案をいただき、先が開かれたような思いを持つことができました。今後、発達障害者支援センターが望まれている役割を再確認していくためにも、今回のように、当事者と意見交換を行う場面を実務者研修会の中で位置づけていただくことを期待します。

大分県発達障がい者支援センター センター長 五十嵐猛